「おえぇ…うぐ
揺らせんでぇ…頼むぅ…
俺を想うなら、横ゆれはよろしくないでぇ」

トイレの個室から、独り言が聞こえてくる

俺は大きく息を吐き出して、額を手で押さえた

「お前は恥ずかしくなのかよ!」

「竜ボンやぁ……おらぁ、もうダメやぁ…」

個室の扉の向こうから、消えていきそうな声が聞こえてくる

相当まいっているようだ

こういう瑞希もなかなか見られないから、面白いかも
少しいじめてやりたい気持ちもある

「あと40分も便器に顔を突っ込んでれば、解放されるぞ」

「40分も? あと5分もしたら、内臓がトイレに浮かびそうや
いややぁ、まだ死にとうないで
まだ実花ちゃんを妻にしてないやんか」

「あほ」

「ホンキやで」

俺は手の中にある酔い止めを見つめた