眠りの淵から何かに呼ばれる

聞きなれた音が、俺の脳内を刺激してきた

意識が戻ってくると、俺は瞼を持ち上げて闇の中で視線を動かした

暗い室内なのに、頭上がやけ明るい
首を捻って、頭を持ち上げると携帯の液晶が煌々と輝いていた




俺を呼んでいたのはお前か!




「今、何時だと思っている」

俺はベッドボードに置いてある黒い携帯を手に握ると、無礼な相手に向かって口を開いた

「7月7日午前3時23分やで、相棒!
七夕さんやで
年に一度、愛を確かめ会う日や
俺と竜ボンにぴったりな日やないか?」

くそ明るい大阪弁が頭の中に響いてきた
相手の名は久我瑞希
俺の悪友だ

互いに他人に知られたくない過去を知りあっている仲と言うべき

恋人にすら言えないダークな過去を、お互いに持っている

お互いに持っているから、強い絆ができたのかもしれない

片一方だけが闇を持ち、もう一方が普通の生活をしていたら、こんな長い付き合いをしなかった……はず、だが夜中に電話してくるのは頭にくる

「どこが? 俺は真夜中に相手の都合も考えずに電話をしてくる男と愛を語りたいとは思わないし、愛を語るならむさくるしい男より綺麗な女がいい」

「俺もや。ホンマ、気が合うなー
俺もベッピンな若い女がええわ」

いったん、会話が終了する

沈黙が10秒ほど続くと、瑞希の背後でせわしなく動く音が聞こえてきた