面倒事に巻き込まれないには、何もかも内緒にしておいた方が楽だ。

学校では、母親が芸能人だと言っていなかった。

まさか、泣く子も黙る紅原綾子の娘がいるとは、学内の誰も知らないはずだった。


もしも光太郎が「紅原綾子の娘、緒方奈央はどこだ」なんて言ったとしたら、一貫の終わりだ。


しかしあの一件から、学校での私の立場はどうなったかというと、

心配していたほどには何も変わっていなかった。



後から聞いた話によると、光太郎はかなり粘り、執念深く校内を練り歩いたらしいが、

どこに行っても人に囲まれ、私を探すどころではなく、


結局身動きが取れなくなって、諦めて退散したとの事だった。


学生の男女比は、男3に対して女7くらいだから、さぞかし女子に絡まれる率は高かっただろう。


ああ良かったと、安心した。