館に着いた私を出迎えたのは、茶の髪に茶の目をした少年だった。

私を見るなり嬉しそうに笑う。

その笑顔が妹のレイシャに似ていて、私もほんの少しだけ顔が緩んだ。



「お、無事連れて来れたみたいだな。さあさあ入った入った」


吸血鬼は一人、館の奥へ消える。

私の背を押して椅子に座らせると、外は寒かっただろといいながら温かい紅茶をテーブルに置いた。

そして私の正面の椅子に腰を下ろしてきらきらした顔で私を見ている。


何を期待されているんだろう…。


「…変なもの、入ってないわよね」


香りは普通の紅茶だ。薄紅色の薔薇の花弁が一枚浮かんでいる。


「心配すんなって、ただの紅茶だから。趣味で集めてるんだけど、俺以外に飲む奴いなくてさ」


嬉しそうに、にーと笑った。


「誰かに飲んで欲しかったんだ」


そんな無邪気な顔をされては、断るわけにはいかなかった。


「それじゃ頂きます…」


私は思い切ってカップに口をつけた。