ぼうぼうとしげる背のたかい草。

ゆきはちっちゃくて、すっぽりかくれてしまうから、

ボクはガサガサと音をたてる草をひっしでおいかける。

ズボンやくつやTシャツにまとわりついてくるトゲトゲの実がじゃまくさい。

さいしょはひとつひとつとっていたけどあんまりたくさんなのでとちゅうであきらめた。

まるではりねずみ。今だれかにだきつけば、チクチクしてたいへんだ。

そんなことを考えていたら、目の前のガサガサという音が消えていた。

ボクは不安になってあたりをみまわすけど、見えるのはしずかにゆれる草だけだった。

どうしよう、もしゆきとはぐれてしまったらきっとボクは家にかえれない。

これだけの草むらだから、ヘビやハチやクモがいるかもしれない。

ひょっとするとそこなし沼があるかもしれない。

さっきまでてんごくにつながっていると思っていたこのさんぽ道が、急にじごくの入り口みたいに思えてきた。

ガサッ

目の前の草がうごいた。

ぼくが一歩あとずさると、その草のなかから飛び出してきたうでがボクのみぎうでをつかんだ。

ぐいっとひっぱられて、その草の中にひきこまれる。

ボクは思わず目をつぶる。

体じゅうがガサガサと草にこすられたけど、すぐにそれはなくなった。

それまで草をふみつけていた足のうらが、少しかたい地面をふんだのがわかって、ボクは目をあけた。

そこにあったのは、いちめんのおっきなひまわり畑。

みんなおひさまをじっとみつめて、となりのヤツに負けないようにと伸びていた。

一番ひくいやつでもボクとゆきの2ばいくらいのたかさがあった。

ん?ゆき?

ぼくはおもいだして右手を見る。

まだつかまれたままの右手、それをつかんだ右手。

その手を目でおっていくと、ひまわりよりおひさまよりまぶしい、ゆきのえがおがあった。

おひさまをみつめるひまわり。ゆきをみつめるボク。

夏があついのはきっと、みられたおひさまがてれてまっかになっているからなんだ。

そう思って、ボクはすぐ近くのおひさまから目をそらした。

いまほっぺたがあついのも、きっと夏のせいなんだ。