聞きたくない、あいつの声。

見たくもない、あいつの顔。



なのに、なんでいるの……?


ガタガタと尋常じゃない震えと、ドクドクと脈打つ心臓。


状況が理解できない。



あいつが一歩づつあたしに近付く。


「……や……いや」

それに合わせてあたしは後ずさりをする。


来ないで……


「凛」

呼ばないで……

なんで……


「駄目じゃん凛。せっかく彼氏が迎えに来てくれたんだから」


声がしたほうに視線を向ける。

杏……??


「杏……なんで……」

警察だって……警察だって言ったのは、杏でしょ……??


「やめてよ、そんな馴れ馴れしく名前を呼ばないで」


杏……


「もう凛が逃げ出して話しを聞いたとき、笑っちゃいそうだったよ」


どういうこと、杏……


ただあたしは笑っている杏を見つめることしかできなかった。