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【短】罪は、蜜より甘く

罪は、蜜より甘く
~紫苑~





――それを見たのは、本当にただの偶然だった。




 最も信頼している友人の将哉(しょうや)と共に、久々の杯(さかずき)を交わし合い、語ったために、紫苑が屋敷へ戻るころは、すでに深夜を過ぎていた。

 
 屋敷へ遅く戻ったのは、将哉と杯を交わし合っていたという理由もあったが、それこそ早く切り上げようと思えば、切り上げられるものだった。

 深夜まで長引かせたのは、紫苑が自ら意図してやったことだった。


 理由は、最愛の妹――香夜歌にできる限り会いたくないから。


 決して妹を厭うっているわけではない。

 むしろその逆で、愛おしすぎるのだ。




 ……それこそ、恋慕の情を抱いてしまうほどに。




 四人の妹がいる中で、なぜ末女の香夜歌なのか――そもそも、なぜ妹に恋慕の情など寄せてしまったのか。

 いくら考えても、その答えは見つからず、気を緩ませてしまえば、すぐ香夜歌に会って触れたくなる。

 
 そして、その先は――。

 
 兄として最も軽蔑すべき考えが脳裏をよぎる。





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