「よく眠れましたか?琴弥様」



「………はい」




翌日。


朝一番にここへやって来た笹山さんに、あたしは作り笑いを返した。



…本当はよく眠れてなんかいない。


目を閉じれば、酷い言葉を口にする岬サマばかりがまぶたに浮かんで来て。


一人で夜を過ごす事は慣れっこだったけど、初めて「怖い」と思ってしまった。




「琴弥様、岬様はどちらへ?」



「はいっ…?」




あたしは、予想外の質問に思わず声を発してしまった。



今のはわざと…?

しかし、笹山さんの顔はいつもと変わらなくて。



…もしかして、笹山さんは昨日の事を知らない?




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