「ねぇ、カエティス。旅に出てから何をしていたの?」

興味津々にネレヴェーユは木に縋って本を読むカイを見上げ、尋ねた。

「カイさん、私も知りたいですっ」

「私も知りたいな」

同じく興味津々にリフィーアとエマイユも主張した。
更にその隣でウェルシールとエルンストも賛成のようで大きく頷いている。

「え、何って、旅をしていただけだけど……」

突然何を言い出すのかと言いたげな驚いた顔で、カイは答えた。

「隊長、旅の内容とか知りたいんですよ、皆さん」

「……え、何で?」

「君、全く話さないでしょ、そういうことは」

イストの言葉に目を瞬かせるカイに、エマイユは説明する。
早く教えろ、と言いたげな目でカイの珍しい水色の右目と銀色の左目を見つめる。

「俺の昔の話を聞いても、つまんないよ……? ねぇ、イスト君」

「それはない」

「それはないです」

「それはないわ」

同時にカイとイスト以外のこの場にいる全員が否定した。

「皆で否定しないでくれないかな? 傷付いちゃうよ」

「カエティス、思ってもないことを言わないでよね」

「……隊長、諦めて話した方がいいと思いますよ」

「……やっぱり? 仕方ないなぁ、つまんなくても苦情は聞かないからね」