ムカつくヘンタイ男に、引き寄せられたままの私。


そうして何食わぬ顔で、会場へヅカヅカ突き進むヤツ。


コレって拉致同然だ…――



「ちょっと…!」


一向に離してくれないオトコにいい加減、業を煮やたのに。



「どうかした、未月?」


「っ、ちょ・・・

イチイチ、耳元で話しかけないでよ!」


不用意に笑うヘンタイに、私はまた力なく睨みつけただけ。



「クスッ…、感じやすいよな未月は――」


「なっ…!違うわよ、ていうか…!

馴れ馴れしく、未月って呼ばないでよ!」


囁かれる左耳を封じようと、空いた手で防御したいのに。


腰に置かれたままの手と、密着した身体にも阻害されて。



またまた情けない反論しか、今の私には出来ない。