確か浴衣来て庭に散歩に出たはず

 なのに、今私が身に付けているのは、紅く華やかな着物

 これは夢なんだわ

 「お目覚めの様ですね」

 パニクってる私の前には

 「紅…さん?」

 「良かった、わたくしの事は覚えていて頂けた様ですね」

 「あの、私…長いこと眠ってしまったのかしら? それとも、まだ夢の中なのかしら?」

 「いえ。夢ではございません 時空を越えて参りましたので、時間が少しズレているだけでございます」

 「時空?」

 よく見るとさっきまでいた古びた建物は、まだ真新しい。

 「はい、此処はわたくしの世界 つまり、1007年の京都でございます」

 「せん…なな年?」

 それで、建物がまだ新しいのね

 って、感心してる場合じゃないよ

 「はい、貴女は選ばれし者でございます」

 私…時を越えてきた?

 教科書に載ってる平安時代?

 でも、紅なんて人いなかったわ

 「…それって? どうして私が? 璃花は? 家族はどうなるの?」

 「御家族やお友達の事は心配なさらなくても大丈夫ですよ。貴女は、少しの間だけこの国を守って頂きたく思います この梅の木によって選ばれし者です その腕につけられた輪が何よりの証拠でございます」

 心配するなって言ったって…

 それに

 「国を守るって、私まだ17よ」

 あと数日したら18だけど

 「十分ですよ この国では12歳を越えているものであれば、皇室に女御として入館することができますので、年齢には問題ございません」

 皇室?…女御?

 頬っぺたを叩くが代わり映えしない風景

 「元の世界に…帰られ…ますか?」

 「帰られますよ きっと。」

 「……。」

 どうやら、選択肢はないようね

 まぁ、帰れるのならいいっか

 元々楽天主義の私は、あっさりこの状況を受け入れる事に