お正月。

お父さんとお母さんと一緒に、いつものようにお年始のご挨拶。

「お母さん、変じゃない? 売れない演歌歌手みたいになってない?」

「もう、何回訊けば気がすむの? 灯歌は可愛いわよ。世界一」

「もうちょっと気合入れて褒めてよぉ」

助手席に座っていたお母さんは、もう振り返ってもくれなかった。娘がこんなに困ってるのに。

確かに家を出てからここまで、通り過ぎてきた信号機の数と同じくらいの回数で同じこと訊いてるけどさ。

私は膨れっ面でシートに座り直す。いけない、袖がクシャクシャだっ!!