ブーツの硬質な足音が淡々とグレーのアスファルトに響く。もうどのくらい走ったのだろうか?

 重いライダーブーツのせいで足は鎖に繋がれたように動きが鈍く、膝は徐々に感覚を失っていった。

(止まってたまるか!)

 何度もくじけそうになる意志を歯を食いしばり奮い立たせ、嫌がる素振りを見せる太ももを強引に引きつける。

(死ぬ気でやれば出来ないことは……)

 やはりある。前へ進むごとに、だんだんと地面と足の裏の間の距離が縮まっていく。やがて時折つま先をつっかけるようになり、ついに一歩も進めなくなった。

 足りない酸素を補おうと、肺はフル回転で膨張と収縮を繰り返している。情けないほど不健康な体は頭痛を催し、胃袋は苦い液を吐き出した。