広島を過ぎる頃、それはやって来た。

 上空にひとつ、薄い線が走ってゆく。それはもう今日に限っては見慣れた光景だった。大きなものはたまにしか見ないが、小さなものならば分刻みで通過してゆく。

 しかし、

(なんだこれは?)

 背筋が震えるのが分かる。ひとつの線を追うように幾つかその線が増えると、またそれを追うように更に何十本もの線が加わった。

 飛んでゆくスピードがまちまちなのは高度がそれぞれ違うからだろう。瞬く間に隕石群によって埋められた空は雲を切り裂かれ、春ののどかな様相を一変させた。

 何百、いや何千でもきかないだろう、大気圏外から飛来してきた凶暴な石の塊は想像を絶する数に登り、見える限りの空を覆いつくした。