「閻松井さん」


帰りの車のなかでお悩み相談。


「……その呼び方、今は無視してあげる」

「あたし、あの人たちとやってける自信が全くといっていいほどない」


思い出すだけでも、もやもやする。



確かにあの人たちが言ってたことわかるけど、自分の思い通りにするために優しくするなんておかしいよ…。


口を尖らせてると閻松井さんが、あたしを見て笑った。


「……どうしたの?」

「誰とでも仲良くできる貴方がやってける自信がない、なんて言うってことはよっぽどね」



別に、嫌いとかそうゆうのじゃなくて。


許せないんだ。

あんな風に考えちゃうあの人たちが。



いきなり閻松井さんがバックの中から一枚のCDをだす。

「光、ちょっと聞いてみて」


ステレオから柔らかい声が流れてきた。


「……優しい、歌だね」

ひとつひとつが優しく包み込んでくれるような曲調。



「あたし、好きだな。この歌手さん」

「あら、貴方も知ってるはずよ」

ステレオから閻松井さんに視線をうつした。


「あたしも?」

「えぇ」

「…わかんない」


頭を駆け巡らせてもこんな歌を歌った人は記憶にない。



「貴方がさっきまで仕事してた人たちよ」



その言葉に目を大きく見開いた。