俺はキャンパスを急いで横切っていた。待ち合わせの時間をとうに過ぎてしまった。

 あいつが悪友仲間の一人、Hと話している。こいつは女専門で腹が出ている割には手が早い。ユーモアがあって話しが巧みなのだ。あいつは笑いながらHと話している。背の高いHを少し見上げるようにして話しているあいつは水色のスニーカにジーパン、浅黄の格子縞の半袖シャツを裾出しで着ている。
 俺は近づきながら少しいらだった。Hの野郎、あいつを女と話すときの表情で見ていやがる。
 あいつが俺を見つけて微笑んだ。Hがあいつの視線を追って俺を見る。少し忌々しそうだ。
「よう、待ったか?」
 俺はHに目配せするとあいつに言った。
「遅いよ。・・・じゃ、やっちゃん、また来週」
とHに言った。
「ちぇ、仲良くお帰りかい。妬けるね」
「へへ、だって家が同じ方向だもん」
 俺はHの目線を追ってはっとした。あいつはシャツの上の胸までのボタンを外していて、下に光沢がある黒いタンクトップを着ていた。右肩に掛かった大きなスポーツバッグのベルトがシャツの襟をはだけて胸が覗き込めた。あいつの柔らかな胸の線が黒い光沢の下着と合って色っぽい。そして乳首の形が分かった。あいつは俺と同類となったHの盗み見に気づいてない。
 俺は慌てて、
「そ、それ持ってやる」
とスポーツバッグをあいつの肩から外した。
「へえ、優しいんだな、気持ち悪い」
「・・・この間お前、肩をくじいてただろう。それに遅くなったお詫びだ」