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「後ろに乗れよ。送っていくよ。」
 あいつはつなぎスーツの胸のジッパーを、上に閉じながら言った。銀色掛かった灰色のワンピースに同じ色の長ブーツ。締めたベルトが格好良く胴を縊らせている。V字の紫の線が、背中の縫い合わせに入っている。ブーツの脹ら脛の両側から踵まで、やはり紫の筋が見える。
「えっ・・乗っていいのか?」
 俺はちょっと驚いたように聞き返した。
 あいつの後ろ姿を見ながら、後ろにぴったりとくっついて乗る自分の姿を想像していたのだ。でもそんなことは起こらないだろうと思っていた。
 あいつは、俺がときどき変(、)な目であいつを眺めていることを知っているはずだ。
 あいつは面倒くさそうに、
「送って行くって言っただろ」
 首までの髪を襟から出しながら上目使いに言って、くるりと翻って、右の長靴の裏を見せながら400CCに跨った。俺はスーツのためにさらにふっくらしたあいつの尻を見ていた。形の良い尻のラインに、陰部の膨らみがさらに俺の心を掻き立てた。
 俺が見ているのを知っているのか知らないでか、俺に尻を突き出すようにしてペダルを踏み込んだ。挑発するかのように。