蒼がうちに同居して1日目の朝の食卓。パパはすでに仕事に出掛けていて、ママと蒼と3人で朝食を食べる。




「蒼くん、よく眠れたかしら?」




ママが、蒼のご飯を茶碗によそいながら訊くと、蒼は笑顔で答える。




「うん。気持ちよく眠れました!」




この変態が…!




「まぁ蒼くんは、小さい頃からよくうちに泊まりに来てたし。心配いらないわよね?何かあればすぐに言ってね?」




「ありがと、おばちゃん!」




パパもママも、小さい頃からずっと蒼のことを本当の息子のように可愛がってる。




こんな変態に優しくする必要ないのに、ママってばお人好しなんだから。




それにしても蒼は、朝から白いご飯を勢いよく口に運んでく。




「朝からよくそんなたくさん食べれるね。」




だから、いつのまにか背がこんなに大きくなったのね。




「絢音…?全然食べてないじゃない…」




ママは、あたしの顔を心配そうに見つめる。具合が悪いわけでもないのだけど、なんか蒼のことで胸がいっぱいで、お腹空かない。




「別に…もうあたし行かなきゃ…!行ってきますっ」




あたしは箸を置き、イスの上に置いておいた学校のカバンを手に取り、そのまま玄関へと急いで向かった。




「絢音…っ!待てって!俺も行くよっ」




慌てて蒼も、あたしの後を追ってくる。




「いってらっしゃ〜い!気をつけるのよぉ〜?」




明るいママの声に、後ろを振り向くと、ママは笑顔で、大きく手を振っていた。



蒼との突然の同居生活。




驚いたし、動揺したけど、でも、なんだかんだで楽しい高校生活が始まると思っていた。




だけど、人生は甘くない。