俺は、水嶋家のひとり息子、水嶋 蒼。




隣の家に住む

同い年の絢音と共に、



俺たちは、今日から高校生になった。




体育館での堅苦しい入学式も終わり、新しい教室へと長い廊下を歩いていく。




「こっちだよ!蒼!遅かったじゃん。何してたの?」




絢音が前から走ってきて、俺の腕を掴んで左右に振り回している。




「おまえは…犬か」




そう、まるで犬だ。
飼い主の帰りを待ちわびて、じゃれる犬のよう。




「…サッカー部のやつらと話してた」




「蒼って高校でもサッカーやるのっ?」




絢音は、すごく嬉しそうな顔で、俺に顔を近づける。




「…もちろん……つーか、手を離せ、手を…」




「そっかぁ…あたしも嬉しいっ!蒼、サッカーうまいもん。頑張ってねっ」




人の話、聞いちゃいねぇ…




「…適当にやるよ」




絢音は鼻歌を歌いながら機嫌良さそうに、俺の腕を引っ張りながら廊下を歩き出した。






………俺には

ずっと片思いをしている女がいる。