達郎は1枚の写真を指した。

男の名は塚本拓也。バンドではドラムを担当している。

パッと見は今風の2枚目だ。

「塚本は被害者と交際していた。つまり1番身近な存在だ」

「被害者とトラブルはあったんですか」

「生活費を稼ぐために新宿のホストクラブで働いているんだがね。事件の前日にその事で大喧嘩になったそうだ」

「口論のもつれが原因だと?」

「あくまで仮定だよ」

「やはり根拠は『つ』と『か』ですか」

達郎は血文字の『つ』が写っている写真に目をやった。

『つ』と『か』は『つかもと』を指しているというのが大方の見解だ。

「被害者が残してくれた手がかりだからね。無視はできんよ」

「でも塚本にアリバイはあるんですよね」

塚本拓也に関する板書を眺める達郎。

岸警部は肩をすくめながらも

「塚本のアリバイに関しては徹底的に洗い直すつもりだ」

と言い切った。