寝床に通されると静音は驚いた。

「捨吉殿!し・・・修理と同室とは何事!」
 そこは修理の寝室であり、奥に修理の床、濡れ縁側に静音の床が敷いてあった。
 捨吉は慌てることもなく、
「静音様。修理様は卑怯なお方でっしゃろ。だから付いて寝れば逃がすことはありまへん」
「・・・でも、同じ部屋とは・・・」

 捨吉は静音が修理を見た時に一瞬ではあるが、うれしそうな顔をしたのを見ていた。口では仇だと騒いでいても一緒にすれば・・・にやにやしている。

 静音は自分の床の上にちょこんと座り、刀を抱いて修理を睨んでいる。

「良いか・・・変なことをすれば斬り捨てる!」
「・・・何もせぬ」

 修理はどかと横になり、頭に両手を付けた。静音はしばらく刀を抱いていたが、修理の方を向いて横になり、右手には逆の握りで柄を握る。

 蝋燭が段々と暗くなった。
「静音」
 修理が呼ぶと、はっと息を付いて刀を握りしめる。
「どうして出てきたのだ?」
「・・・」

 修理は月明かりで明るい障子の方を向いた。静音の寝ている方を。
「・・・俺は決めたのじゃ!お前の首を持って帰る!」
 無言。

 だが、重なる野宿の旅の疲れが静音を襲ってきた。目が・・・重くなる。

 修理が立ち上がって静音の床に来た。静音は健康的な寝息を立てていた。
「静音・・・」
 修理は静音の髪を撫で、頬に触った。
「夢にまで見たぞ」