修理は、庄左右衛門の屋敷に居候をしている。

 庄左右衛門は、何時まででも逗留してもよいと言ってくれた。
 京に出てきたは良いが、行く宛もなくしばらく厄介になるしかない。さて、これからどうしたものかと、修理は濡れ縁で、山茶花の生えている庭を見ながら、ぼんやりと考えていた。
 静音はどうしているだろうか・・・静音の顔に万作の顔が重なった。


 あの時、修理と万作は青巌寺の講堂で最後の別れを告げた。
 柳の間からは見えない角で、秀次に許しを得てしばしの間を頂いた。
 懐に抱いた万作の肩は震えていた。修理の背に廻した万作の腕が、今生の力を入れて二人の身体を合わせていた。
「修理様・・・一度だけのお情けでしたが、私は幸せでした」
「万作殿!・・・儂も・・・」

 万作は修理の言葉に、幸せそうにこっくりとした。