テンションの上がりきった宗教くんはハガガガガg-!と奇声を上げてレジの上から飛び降り追いかけてきた。おれは「警察、警察」とファミレスのバイトに訴えかけながら自分の車のほうに向かった。ゴーンと大きく鈍い嫌な音に、とっさにふりかえってみると彼は透明のガラス扉に顔面をぶつけていた。おれは、半笑いのまま大急ぎで自分の車に乗り込み、震える手でキーを差し込みエンジンをかけた。TVモニターにはリアディゾンが映っていたので反射的に口を尖らせた。早くその場から離れようとアクセルを吹かしても車がなぜか進まない。

轟くエンジン音

微笑むリアディゾン

ルームミラーを見ると血まみれの関口と目が合った。彼は顔を真っ赤にしながら笑っていた。車が上下に揺れた。あせってさらにアクセルをベタ踏みする。けたたましいエンジン音とからまわりするタイヤの音、やがてその音に混じって、サイレンの音が聞こえてきた。ルームミラーから彼が消えたのと同時に、それまで空転していたタイヤは地面を掴み、ものすごいスピードで前に進んだ。

ファミレスの入り口の階段に

前輪が乗って、


ジャンプして宙に舞う車が、


スローモーションで



ガラス扉に激突した。




粉々に砕けるガラスが




ゆっくりと飛び散る中、



おもわず神に祈った。






あいつの信じている神とは違ってて欲しいな









こなごなになった





まあるいガラス片は




車内と



車外と



店内に


ちりばめられた




明るい昼間に見ることのできる



満天の星空のようで、



まあるいガラスは


キラキラと



光を


乱反射させながら、



ゆっくりと




回転しながら
     落ちていく




そのガラス片に
  

  つつまれたぼくは、





リアディゾンが目を閉じたタイミングに





やさしくキスをした