何かに夢中になっている時ほど、時間の流れの速さを実感することはないけれど

何かに一区切りつけることで、時間の流れを実感することもある

あの仕事以来、ココは母親のブランドの専属モデルになっていた

“専属モデル”なんていうとたいそうなもののようにも聞こえるが、実際、ジョー、ケーゴ、マキとわいわいしているうちに撮影は終わっているし、撮影スタッフも“チーム姫花”のスタッフなので、物心ついた時から知っている人ばかりだったからか、ココにとってはそれほど大きな変化とはとらえていなかったのだ

最初の頃はザワついていた周辺も、“我関せず”のココの態度に次第にまとわりつかなくなっていったので、ココは相変わらず、時間をかけ、郊外のベットタウンから都心に向うサラリーマンとは真逆の通学経路を辿るのだった

卒業を控えた3年生は自由登校になっている、いつもより少しだけ静かな校舎

ココは、担任に呼ばれ、進路指導室と書かれた扉をノックした

「どうぞ・・・」

「失礼します・・」

殺風景かと思いきや、使い古しのソファとローテーブルのある室内をキョロキョロしながら、部屋へと足を進めた

「東野はここに来るの初めてか?」

「はぁ・・まぁ・・」

期末考査を終え、終了式を待つだけのこの時期、来年は担任になるかどうかもわからない自分に何の話があるんだろう・・と思いつつ白髪交じりの担任の前のソファに腰を下ろす

「どうだ? 学校は楽しいか?」

「・・・・・・」

何を言い出すのか・・とココは眉をひそめた

「往復4時間・・・それだけの時間を掛けてまで通うことに見合うものはあったか?」

「・・・・・」

なんでこの人はそんなに意地悪な事をいうのか・・とココは眉をひそめた