家と学校の往復で時間が過ぎてゆくココは、週末の昼下がり、ひとり、家のリビングでボーっとしていた

転校してきたジョーは相変わらず忙しく、学校に来ていても、ほとんど顔を合わせることは無く、ケーゴも最近忙しいらしくAQUAに行っても見かけない

父はハリウッドで賢次くんと映画の撮影があって、しばらくこっちには戻ってこれないらしいし、母は念願だったネイルサロンを青山にOPENすることになって、大忙しだった

学校でもひとり、家でもひとり

誰とも会話をしない日もめずらしくなかった

そんな時、北斗の写真集を眺めると不思議と心が穏やかになれた

北斗がシャッターを押すとたちまち楽園になるその風景は、ココにとって夢の国で、その夢の国に移っている自分の姿は、どこかはかなく写った

北斗とも連絡をとっていなかった

学生と社会人ではもともと生活のサイクルが違うし、もともと写真集を作るということで知り合ったふたりが、その仕事が終わった今、会う理由がないのも事実だった

♪♪♪

家の電話が鳴った

ココはゆっくり、電話を見たが、そのまま立ち上がることも無く、鳴り続ける様子を見ていた
程なくして、留守電に切り替わる

「ココ!! 私よ!! いるんでしょ!! お願い! 出て!!!」

電話から聞こえる母の焦った声に驚きながらも、ココはおもむろに受話器を上げた

「あ~ やっぱり・・ 居留守だと思ったのよ・・」

電話にでたことに安堵のため息の姫花

「どうしたの?」

「え? あ!そう! 忘れ物しちゃってね、どうしても持ちに行けないから、悪いんだけど、こっちまで届けて欲しいの」

「青山まで?」

「そう・・ サロンの場所はわかるわよね?」

「わかるけど・・・」

「よかったわ・・ ママの部屋に黒のケースがあると思うんだけど、それを至急持ってきて頂戴ね!」

「も~ 」

「ね! ココお願い!!」