まだ冬になったばかりなのに、今日は底冷えするような夜だった。


こんな日は、何となく寒がりなあの人のことを思ってしまうんだけど、だからって電話するってわけでもない。


何の仕事をいつしてるのかも知らないし、ましてや女の子と居たら悪いしなぁ、なんて思うからだ。


脂オヤジにご飯奢ってもらって、そのまま同伴して、一回延長して、彼は帰って行った。


無意識のうちにグラフに目をやり、思わずため息を漏らしてしまう。


妥当な順位は、つまりは何もかもが中途半端ってこと。



「レナさん、ご指名です。」


トイレから出たところで、黒服にそう、呼び止められた。


視線を入口へと向けた瞬間、あたしは間抜けな顔して二度まばたきをしてしまう。



「…ジル?」


そこに立っていたのはジルと、そしていつも一緒なのか、ギンちゃんの姿。


あの日からあまり間を開けずに会いに来てくれた嬉しさもあり、きっとあたしはお店の中じゃなかったら、飛び付いていたのだろとは思う。



「ご指名ありがとうございます、レナです。」


笑い、あたしはジルの隣へと腰を降ろした。


他にテーブルには二人のヘルプの子がつき、2,3言言葉を交わしたギンちゃんは、二人ともに場内指名を入れていた。


彼曰く、色んな子が代わる代わるテーブルにつくのが嫌なのだと言う。



「びっくりしたよ。」


「ん、そんな気分だった。」


「そっか。」


小さく笑っているあたしは多分、喜んでいるのだろうと自分でも思う。


売り上げ云々じゃなく、お金使ってまであたしに会いに来てくれたことが、だ。