先日、気の早い北国からは雪の便りが届いたけれど、この街ではそんなものも、まだ当分先なんだとテレビで言っていた。


いっそ雪でも降ってくれれば綺麗なのだろうが、それにしてもただ寒いばかりで嫌になる。


お店に来てくれた日以来ジルからは連絡がなくて、代わりに阿部タヌキからのしつこい誘いの電話ばかり。


風邪だとか友達の結婚式だとか言って適当に交わしてるけど、それもいつまで持つか、って感じだった。



「…アイツ、今頃女と居るのかなぁ…」


こんな日ばかりは、さすがのあたしも人肌恋しくなってしまう。


嫉妬心ってものではないけど、所詮は飼い猫なんて彼女より優先されるはずもないし。


てか、何であんな怪しくて危ない男を求めているのだろうか、と末期な自分を嘆いてみたり。


ただボーッと携帯を眺めていると、テーブルの上に置いていたそれのバイブが振動した。


驚いてディスプレイを確認すれば、“お母さん”なんて文字に思わず肩を落としてしまう。



「…はい。」


『元気でやってる?』


「あぁ、うん、まぁ。」


『シュウ、見つかった?』


二言目でそれかよ、なんて思わず唇を噛み締めてしまう。


結局はあたしの心配なんてしてないってことだし、意志とは別に、苛立ちばかりが募ってしまうのだから。



「見つかるわけないじゃん。」


『…そう、よね。』


「話、それだけ?」


『えぇ、それじゃあね。』


そう、実にあっさりと、電話は切れてしまった。


別に期待なんてしてなかったってのに、虚しさは込み上げる一方だ。