煌びやかなネオンに照らされて、ついでにお酒の力も借りて、大して面白くもないのに毎日笑ってる。


客の脂ぎったオヤジはまるで撫でるようにあたしの膝の上に手の平を乗せ、鼻の下を伸ばした顔で臭い吐息を吐き掛けるのだ。


それを上手いこと言って交わし、また、笑顔を作った。


まったく、キャバ嬢ってのも楽じゃない。



「レナちゃんはさぁ、何でこんな仕事してるの?」


「弟が、病気なんです。」


「…病気?」


「脳に腫瘍があってね、ちょっと難しいらしくて。
だからあたし、家族の支えになれればな、なんて思って。」


半分嘘で、半分本当。


だけどももうどっちでも良くて、嘘臭く作った悲しげな顔を向けてみれば、客のオヤジの同情めいた瞳が僅かに揺れた。



「あたしね、頑張らなきゃダメなんです。」


「そうか。
じゃあ今度、同伴してあげようかな。」


「ホントに?
嬉しい、村山サン大好き!」


そう、大袈裟に喜んで見せれば、脂オヤジこと村山サンは、デレデレとだらしなく鼻の下を伸ばしてくれた。


お金を払い、作りものの恋愛を楽しむ空間。


あたしはただ、演じてるだけのキャストで、腹の底では毎日毎日吐き気ばかりが込み上げている。


向上心もなければ、大した欲だってない。


毎回同じ位置をキープして、妬まれることも恨まれることも、トラブルももめ事も適当に回避して、あたしは毎日を過ごしているのだ。


生活費が稼げればそれで良いと思ってるし、あたしは他に、やらなきゃならないことだってあるのだから。