助けなきゃ。



炎に呑まれ、崩れ落ちるお店を見て、そう思った。



そう思った瞬間、足が勝手に動き出していて。


庇うことしか、私には出来なくて。



震えるこの子を抱きしめて、私はぎゅっと目を瞑った。


…もうダメだ、って覚悟した。



―――なのに。



「…な…ん、で…?」



炎に包まれたのは、私じゃなかった。


私の瞳に映るのは。


「―――っ…」


「ゼンッ…!!」


苦痛に顔を歪めた、ゼンだった。


「やだっ…、ゼン…!」


小さな男の子は、私の腕の中で気を失っていた。


…でも、どうして?

どうして私じゃなくて、ゼンが…?


「…早く、その子供を安全な場所に…」


店の残骸に埋もれ、炎に包まれているのに、ゼンはいつもの口調でそう言った。


私の瞳に涙が溢れ、静かに頬を伝った。