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 そんなあたしに近付いてきたのが、キュロールに毎晩のように来ていた、都内にキャンパスのある一流私大の医学部を出て、品川にある付属の大学病院で医者をしている清水翔太だった。


 翔太はあたしに気があったらしく、会ってすぐに声を掛けてきた。


 普段は外科医で、十時間ぶっ続けの手術なども手際よくこなす彼は、あたしを弄(もてあそ)ぶ気持ちがあったらしい。


 あたしも若さはあってもお金はあまりなかったし、医者というバサラのような身分である翔太の誘い文句には到底敵(かな)わない。


 一度セックスまでしてしまうと、交際そのものをなかなか断れないのが、あたしの本性だった。


 そしてあたしは翔太のくれるプレゼントの値段が上がるのが分かるたびに、


“この人、危ないわ”


 と思って、敬遠するようになった。


 あたしの二十代は実に波乱に満ちたもので、普通の同年代の人間のいる雰囲気とはまるで違っていた。