太陽が頭上で輝いている時は、パステルカラーの空や海があたしを包んでいたのに。
今は一色。
オレンジの一色に、この世界全てが染まっている。
あたしは息を呑んだ。
「素敵…」
自然と零れる言葉。
――…パシャ
何も考えず、太陽が沈む水平線を眺めていると、シャッターを切る音であたしはようやくそこから目を離した。
「なにしてるの?」
振り返るとあたしの声に、顔を上げた慶介と目が合う。
「シャッターチャンス。でした」
そう言って、カメラを片手で少し持ち上げる。
「え?」と首を傾げるあたしに、慶介は「綺麗だったよ」と付け加えた。
そ…それって…
夕日が? それとも……あたし?
聞きたくても、慶介の優しく細められた瞳にあたしの言葉は喉の奥に引っ込んでしまった。
瞬きを無意識に何度も繰り返すあたしを、面白そうに眺める慶介は一体何を考えてるんだろうか?
そんな事でいちいち赤くなって…しょうがないな。
…の笑い?
それとも、そんな事でいちいち赤くなるなんて、子供だな。
…の笑い?
あたしには、未だに慶介に子供扱されてると感じる時がある。
キスだけで、その先に進まないのだって、そう言う理由があるからじゃないのかな。
頭の中では、物凄い勢いで色んな考えが駆け巡って行く。
なんか悔しいな。
あたしばっかりこんなに焦ってる感じ。
こうなったら、慶介の頭の中をあたしでいっぱいにしてやるんだから!!!
…なんて1人で決意してみる。
そんな中、テーブルには美味しそうなロブスターが乗せられた。
「す…すごい」
ゴクリ。
体って正直…。
お腹が急に空いて来てあたしは生唾を飲み込んだ。