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 私の目の前には、真っ赤なチューリップ、17本の花束。

 震える手でチューリップに埋もれた手紙を掴み、封を開けた。

[愛しい千紗へ。
やっと、君のもとへ帰ることが出来る。
嗚呼、愛してる。
君も、僕と同じ気持ちだろ?
春に迎えに行くからね。
     佐野泰明(さのやすあき)]

 身震いするような気持ち悪い手紙。

 くしゃり、と手紙を握り潰し花束と一緒にゴミ箱に放った。

 全身の震えが止まらない。

 怖くて、気持ち悪くて、逃げたくて、でも逃げられない、どうしようもない震え。

 大丈夫。
 佐野とは、もう無関係なんだから。

 春に迎えに来るわけない。

 ……来てほしくない。

 嬉しかった誕生日が最悪なものと変わり、それを引きずって月曜日学校に向かう。

 重い足取りで廊下を歩いていれば、前からミドリが駆けてきた。

「ちぃーっ!おめでとぉーっ!!」

 可愛らしい笑顔で抱きついて、私を見上げるミドリ。

 いつもなら釣られて笑う所なのに、視界が歪んでしまう。