中間を追って、修理から三間(約六メートル)まで近寄ったのは二人の武士だった。

 二人とも抜き身を持っている。最後に追ってきた三人目の武士は途中で歩を緩め、歩いて近寄ってきた。

 抜き身の二人はまだ前髪の若者であった。
 月明かりで見るも、かなりの整った姿形(すがたかたち)だ。着ているものも上等の織物の小袖と袴のようだ。

 一人が近寄った。緇(くろ)の小袖に襟から見えるのは絹の白帷子か。縦縞の馬乗り袴。乱れた前髪の下から一文字の眉と鋭い眼光。形の良い小鼻に不敵に口端が笑う様に切れ上がった唇。
 静音とはまた違った美しさ。天から降りてきた者のような姿。まだ十六、七か。

 その者が透き通った声で言った。
「何者だ!お前は」

「通りがかりの者だが、一人を三人で追うとは尋常ではないな」
 修理の落ち着いた声は気迫を持っていた。腹が空いているので気も立っている。

 前の二人はそれが分かったのか刀を握り直した。
「そやつは御屋形様に無礼をした!手打ちにいたすよってこちらに渡せ!」

 主人とおぼしき人物が二人の若侍の後ろに来た。真白い絹の頭巾に袴。小袖の上に茶の毛皮の陣羽織を着ている。

「ぶ、無礼はお許し下さい・・・!」
 修理の後ろの中間はぶるぶる震えて手を合わせる。

「何をやった?」
「た・・・ただ、すれ違いざまに『いい月夜で』と言っただけで・・・」
「それだけでか?」
 修理は三人の武士を睨んだ!

「そのぐらいで手打ちにする理屈は何やある!