――――――…


「教えてよ!」


とせがむ皐月に、


「ぜってぇ教えてやんねぇ。」


と舌を出した。


口を尖らせて、ぶつくさ言っている皐月を尻目に、満は星を仰いだ。


覚えていないなら、それでいい。


あえて語る程の思い出でもない。


満は爽やかな夜風に打たれて、10年前の出来事を思い出した。


そう、あれは、
真夏の蜃気楼のような出来事だった。


現実の自分の世界とはかけ離れた夢の世界……