秋は昔から、一人暮らしなのもあり、料理が得意なようだった。


 中でも、美味なのは『ビーフシチュー』。


 何日も掛けて作られたシチューは、肉は口の中で解ける程に柔らかく、デミグラスソースも、コクがあって、でも、しつこくもなく、俺は秋のビーフシチューを食べてからは、余所で食べる事が出来なくなってしまった位なのだ。


「今、仕込み中でさ、来週辺りが食べ頃なんだ。
 ただ、涼平が、来てくれるなら、頑張って作るんだけど……」

「……解った。
 秋のビーフシチューは絶品だから、必ず伺うよ」


 俺は秋に訪問することを告げた途端、『マジで!?』と、抱き着きそうな勢いで、俺の腕を掴み、太陽の笑顔を浮かべた。



 多分、俺が秋から離れれないのは、秋が作る料理に餌付けされてるからかも。


 と、内心、苦笑しながら、来週を心待ちにするのだった。