勝手知ったる何とかで、秋から渡された鍵を使い中に入ると、玄関には、秋の靴と、もうひとつ。


 地味なベージュの女性用のローパンプスがきちんと並んで置かれていた。


 俺は、その見憶えのある靴を見た途端、愕然となる。


 その靴は、俺の彼女が愛用しているものと、同じであったのだから。


『…まさか』


 ……そう、まさか、と思いたかった。


 まさか、友人と彼女が、そんな関係になっていただなんて、信じたくもなかったんだ。




 ドクドクと高鳴る鼓動を服の上から拳で押さえながらも、中へと進む。


 まずは、リビングに行ってみたが、空になったカップが二つあるだけで、秋も彼女もそこには居なかった。


『秋?』


 とリビングから恐る恐る声を掛けると、


『涼平、こっち』


 秋の声が、ドア一枚隔てた向こうから聞こえたのだった。