俺はカップを持ったまま、ソファに倒れ込もうとしていた涼平のカップを取り上げる。


 実は珈琲の中には、俺が仕込んだ睡眠薬が溶けていた。


「おやすみ、涼平」


 そう囁き、一度寝室に向かい、毛布を手にして戻ると、涼平の躰を包む様にして掛けてあげた。


 そして、薄く開いた涼平の唇に自分の唇を重ね合わせる。


 こうやって、涼平が意識ない時に口付ける、甘い……でも苦いキス。


 きっと涼平は知らない。


 高校時代から、涼平に思い馳せてる事なんて……。



 初めてまともに会話したあの日。


 アレは偶然じゃなく、わざと待ち伏せしていたんだ。


 多分、涼平は鈍いから、気付いてる訳はないと思うけど……ね。


「ずっと好きだよ、涼平。
 だから、女には君を渡さないから」


 唇を笑いに歪めると、俺は立ち上がり、冷蔵庫へと向かう。


「だって、涼平の女達は、俺等の胃袋に入って消化されて、排泄されちゃったしね」