不意に木枯らしに吹かれ、あたしはあわててコートの前をかきあわせた。

時刻は午後6時。
日はとっぷり暮れ、あたりはもう完全に暗くなっている。

年明けとはいえ、七草を過ぎればもう、三が日ほどの喧騒はない。

むしろあたり一帯は寒さで縮こまったように静まり返っていた。

「収穫はなしか」
そんなことを思うと自然と足が重くなる。

足を使ってナンボの仕事とはいえ、こうも寒いとさすがにつらい。

「レミじゃないか」

後ろから声をかけられ振り向くと、そこには黒のダウンコートにスーツ姿の男が立っていた。

色白で、品のよい顔だちをしている。

でもどこか憂いを含んだその瞳は、浮世ばなれした雰囲気をかもし出していた。