「木村ってどいつ?」


高校に入学早々、
窓側に席があるその男は、
春の暖かい日差しに誘われて、
机に上半身の身体をあずけ、うたた寝をしていた。


ボーッとしていながらも

(木村…このクラスに木村って名前は俺一人だったっけかな?)


うっすらと聞こえてきた声に反応して顔を上げる。

すると、

周りが黙って、その男“木村”を凝視しているのがわかった。


まるで、哀れむかのように。


(え?)


そして、教室のドアの方を見てみると、
二人の男が立っていた。


(何コイツら。俺なんかしたっけ?て言うか、この二人のこと知らねーし。)


でも二人は近づいてくる。


緊迫した空気の中、三人は注目の的となった。


制服の着こなしを見るに、優等生といった感じではなさそうだし、

ソレを言ったら、この木村も、模範生徒とは言い難い。


そのうえ、
度胸が座っているのか、恐いもの知らずなのか、

目の前に立つ二人を、椅子に座ったまた見上げ、ひと言

「木村ですけど、なにか?」


二人は、ジロジロと木村という男を見続けている。


ますます様子が怪しくなってきたと、
その場に居た誰もが警戒した。