静音の部屋で内藤が静音に手当を受けていた。

 障子は破れ、投げ出された書籍は取りあえず部屋の隅に積み置かれている。その横には儀太夫が腕組みをして内藤を睨んでいる。

「いや・・・面目ない。がはは」
 内藤は決まる悪そうに笑った。目は先ほどの乱闘が嘘の様に落ち着いている静音を、諦めきれないという様に見ている。静音は内藤の顔は見ず、冷や水に浸した手拭いを内藤の頭の瘤に当てていた。
「・・・静音!お前はお目付役に何と言うことをしたのか分かっているのか!」
「ぎ、儀太夫!待て・・・これは・・・ただふざけたのじゃ!静音を責めるな」
「上総!お前も悪ふざけが過ぎる!」

「悪ふざけではありません」
 儀太夫と内藤は驚いて静音を見た。
「・・・内藤様に負ければ本当に女になるつもりでした」
「・・・」

 静音は膝で後ろに下がり、儀太夫と内藤の前に手を突いた。
「父上!お目付役様!私に仇を討たせて下さい!」
「か・・・仇!?」