中沢さんとつきあい始めたことは、芯には言っていない。

ただあの日以来、芯とは口を聞くことがなかった。

店にきても、芯は何も言わずにお酒を出した後、すぐにグラス磨き。

グラスを磨く芯からは、怒りのオーラみたいなものが出ていた。

そのオーラに触れるのが怖くて、あたしは芯に話しかけることができなかった。


芯と口を聞かなくなってから、1週間目。

芯は相変わらずグラス磨き。

あたしは、我慢できなくなった。

「あのさ」

あたしは声をかけた。

「あたし、芯に何かした?」

芯がグラスを磨く手を止めて、あたしを見る。

「別に」

芯は一言そう言うと、グラス磨きを始めた。

「あたしが芯に何かしたんだったら、謝るよ?」

芯は、何も言わない。

「黙ってるヒマがあるんだったら、少ししゃべったらどうなの?」

イラついた声で、あたしは芯に言った。

実際、あたしは本当にイラついていた。

芯の対応に、腹が立っていた。