東京での生活は、大学とバイトのくり返しのみで過ぎていった。


レンとはほとんどシフトが同じなので、毎日に近いペースで顔を合わす。

そんな日々の中、彼は時々


「こうしてると高校時代に戻ったみたいだよな」


などとつぶやくことがあった。


残酷な人。

そんなことを言われて私が喜ぶとでも思うのだろうか。

そうですね、と答えるとでも?


焦燥感はちりちりと、私の胸を端から焦がしていく。

少しずつ、ゆるやかに。


歯がゆい気持ちになりながらも

私はレンの瞳の中に、なつかしさ以外のものを探してしまう。









再会から一か月が経った、空気が冷たい夜だった。


バイトを終え、帰ろうとしていたところを

更衣室から出てきた彼に呼び止められた。


「黒崎、明日は休みだよな?」

「はい」

「晩メシおごるから、一緒に食わない?」


ふたりで。

と言う彼に、私はしばし返事を忘れ、まばたきをやめた。