雲ひとつ無い空と、麦わら帽子。
虫取りあみを持って、家を出る。
森本勝男、小3の夏。
自由研究に虫をつかまえて観察日記を書こうかな、と思って近くにたくさん木がはえてる小さな神社に向かった。
ミーンミーン、と鳴いてるセミ。
セミは、つかまえないでおこう、うるさそうだから。
なんて、子供心に思った。
「カツオー!」
後ろからそう呼ぶのは、隣の家の女の子。
姫条まいだった。
まいちゃんは、手にセミを持っている。
「この子、信長っていうのー!」
「へ?」
「うちで飼うから! よろしくねー!」
それからしばらく、隣の家からセミの鳴き声がした。
「うるせえ…」
俺は捕まえたカブトムシに餌をやりつつ、そう呟いた。
「あっち…」
夏休みなのをいい事に、昼まで寝てしまっていた。
なんか昔の夢を見ていた気がするけど、なんの夢か忘れた。
宿題は三日で終わらせたし、あとは遊ぶ事に専念できる。
今日は何するかな…なんて考えていた。
「カツオー!」
ベランダの窓が叩かれる。
「はいはい、なんですかー?」
「あのねー、お母さんがケーキ買ってきたから食べない?ってー」
「おーう、行く行く!」
「なにー? 今起きたの?」
「おう、サッカーの試合見てたら眠れなくなってさー」
「ふーん」
興味ないんかい、と頭を叩くと大袈裟に痛がるまいまい。
ケーキ、うまい。
とバグバク食べていると、携帯が鳴った。