廊下を歩いていると、明石焼きくんを発見した。


「明石焼きくん!」


そう声をかけると、明石焼きくんはビクッとして振り向いた。


「なにしてんのー?」


小さくため息をついた明石焼きくんは『別に、何も…』と小さな声で言った。
明石焼きくんが立ちつくしていたのは、図書室前だった。


「あ、そういえばもうすぐ朝の読書週間がはじまるんだったねー。 何か借りるの?」


「あ、う…うん、そう!」


あはは、と笑う明石焼きくん。
図書室のドアが開き、中から澪ちゃんが出てきた。


「あ、澪ちゃん! やっほー!」


「あ、まいちゃん。 久しぶりー」


澪ちゃんは笑顔で手を振ってくれたあと、明石焼きくんに視線をうつした。


「ごめんね、明石くん。 本当に私が借りてよかったの?」


「あ、うん。 大丈夫!」


…? なんかあったのかな?


明石焼きくんは『気にしないで』と言ったあと、さささっと去っていった。


「ねえ、澪ちゃん。 なんかあったの?」


私がひそりと言うと、澪ちゃんは答えてくれた。


「借りたい本があったんだけど、その本を明石くんが手に持ってて…どうしても借りたい本だったから、失礼とは思ったんだけどいつ頃返すかだけ、聞いたの。 そしたら、急ぎじゃないから先にどうぞって、言ってくれたんだ」


「あー、そうなんだ。 何借りたの?」


本を見ると、園芸の本だった。


「園芸とかするの?」


「うん、最近ハマっちゃって。 こないだ園芸部に入ったんだ」


「ふえー。 知らなかった」


「明石くんも、園芸に興味あるのかなあ。 部活入ったらいいのに」


明石くんも、園芸が好きなんて知らなかったなあ。



…あ!
すっかり忘れてたけど、明石焼きくんって、澪ちゃんの事好きなんだったっけ!


これは、共通の話題が出来ていいんじゃない?
と、私はまたおせっかいの血が騒いできた。