それは、ぽかぽかと暖かい陽気の午後になる前のこと。


ちょうど、季節は桜が散り、木には若葉が芽吹きはじめた頃だった。






辺りにはそよそよとそよ風が吹き、髪をくすぐるように吹いてくる。


だけど、そんなそよ風や、陽気な天気や気候など全く関係なしに、少年は泣きじゃくっている。


目の前の少女は少し困った顔をしていて、2人を取り巻くように見ていた親たちも苦笑いを浮かべていた。









 「ほら、綺羅(きら)。泣かないで。お別れじゃないよ、綺羅。絶対にまた会えるから。会いに行くし。だから、泣かないで。泣いちゃダメ! ね?」


幼い少女は目の前で泣きじゃくる男の子を笑顔で元気づける。


だけど、男の子が泣き止むことはない。


少女は困惑し、『う~ん』と思っていると、何かを思いついたのか、急に自分の首からペンダントをとり、彼の首へとかける。





突然の少女の行為に驚いたのか男の子は反射的に自分にかけられたペンダントを握り、涙が流れる顔を少女へと向けた。


「深青?」


「あげる! 綺羅が泣かないようにお守り。だから、泣いちゃダメ。絶対に会えるよ。約束」


そう言って、少女は自分の小さな小指をさしだす。


それを見た男の子も恐る恐る小指を出す。少女は確認すると強引に男の子の指に自分の指を絡ませた。