「あー……散々だった」

「はは、声変わりしている割にはリセ君の声、少しだけ高めだもんね。
仕方ないよ。それにロディアさんがお詫びに夕ご飯ごちそうしてくれたし、もう怒るのやめなよ」

「……セレン、何で君が此処にいる」

「何で、って。私の部屋この隣だから。
いやあ……リセ君の助手だ、って言ったら、すぐに良い部屋取ってくれるんだから凄いよねえ」


“そういう事を言っているんじゃない”とリセは言うが、セレンは聞く耳持たずのようだ。

時間は夜。リセ達はある宿の一室にいた。

レンティルがリセの為に、と用意したこの宿で一番の良い部屋である。


「アーヴァイスに何故帰らない?」

「来たばかりでもう帰れ、って酷くない? 私はリセ君の助手。リセ君の役に立ちたいの」

「そうかそうか。じゃあ、それなら尚更帰るべきだ」

「ふふっ! その頼みだけは、む・り・で・す!」


暫くの間口論は続き、その口論の論点は少しずつずれて行く。