リセが出発してから数時間後。

“彼女”はリセの家の前にいた。リセに焼いたクッキーを差し入れする為だ。

リセは昼の休憩時間になると、必ず一旦家に戻る。

それを狙ってやって来たのに当の本人は不在。彼女が怒る点はそこではなかった。


「リセ君……解放者としての仕事が出来たら、私も同行するから呼んでと言ったのに……
何で呼んでくれなかったの? ひどすぎるじゃない!」


クッキーの包みを思わず握りつぶしてしまいそうなほどに震え上がると、

馬車で待っていた使用人の元へ戻り、使用人に何かを言わせる前に真っ先に言う。