三人としたデートは正直、楽しかった。


めちゃくちゃ楽しかった。


初めて乗ったジェットコースターや観覧車、そしてメリーゴーランド。
今思い出しても、楽しくなっちゃう。


…けど。


「愛せんぱーい!」


「沢尻く…って、寄るな!」


持っていた教科書でバシン!と叩くと、沢尻くんは大袈裟にこけてしまった。


「いったー。 何するんですか!」


「何、はこっちのセリフ。 どう考えてもそっちの手がおかしかった!」


「きのせいですよー。 被害妄想激しいっすよ、愛先輩」


妄想なもんか。絶対尻を触ろうとしてたはず!


「あ、音楽だったんですか? 俺も今から音楽なんですよー」


話をそらすように、そう言う沢尻くん。


「まあ、それはいいとして、愛先輩に聞きたい事があったんですよー」


それはいいとして、って自分から言ったくせに。


「なによ?」


「愛先輩の出身中学」


あ、そうか…。
こないだ聞かれたんだった。


「えーっとね。 ここからみっつほど外れた市だから言っても分かんないかもよ」


「へー。 結構遠くまで通ってたんですね」


「ううん、遠くまで通ってたのは恋の方だよ。 私がこっちの高校にするって決めてから、引っ越ししたの」


ふーん、と言う沢尻くん。


「中学の名前は、まだ秘密にしとく」


「え、なんでですか」


「そのうち、ちゃんと話すよ」


「そっか。 じゃあ話してくれるまで、もう聞かないです!」


「うむ、よろしい!」


そう言うと、移動教室だった沢尻くんは手を振って去って行った。