ちょっと意外だった。

拓巳が私をこんな所に誘うなんて…。

いつもだったら、会社の近くの行きつけの居酒屋へ行くのにどうしたんだろう。

拓巳が私を連れて来たのは、市内を一望できる小高い丘の上の小さなフランス料理のレストランだった。

ここは雑誌などでも紹介される人気レストランで予約がないととても入れないと聞いている。

突然の予定だったはずなのによく予約が取れたと思う。


「どういうつもり? 
こんなお洒落なレストランに来るなんて、よく予約が取れたわね。
それにお値段だって…ワリカンにしようよ」

「今日は俺の奢りだって言ってるだろう?
どういうつもりって…特別な日だからな。
ダメ元で電話してみたんだけど、ちょうどキャンセルがあってタイミングよく予約が取れたんだ」

「簡単に奢るって言うけど、その辺の居酒屋とは違うのよ。
凄い金額になっちゃうかもしれないでしょ?」

「いいんだってば。ほら、オーダーするぞ。
シェフのお勧めコースでいいかな?」

「え…あぁ、うん。いいけど…」