亜里沙が俺を振り切るように駆け出していく。

冷や汗が流れた。


流産しかけているって言わなかったか?

走ったりしたらそれこそ大変な事になるんじゃないか?

「やめろ亜里沙。走るな」

俺の静止を振り切るように逃げていた亜里沙がその声に動きを緩めた。

その瞬間を逃さず華奢な手首へと手を伸ばす。

ここまで来て逃がすわけ無いだろう。

おまえを二度と離さないって決めてきたんだ。



―― 行くな!



手首を掴んだ時、余りにも細く折れそうな事に一瞬ひるんだ。

…それでも離すわけにはいかない。離したら今度こそ永遠に亜里沙を失ってしまう。

そんな気がした。